現代社会と浄土宗寺院や教師との関連で生じる課題の研究。葬祭や開教など信仰に直結した研究テーマに加えて、寺院や教師が大きな翻弄されるような急激な社会変化に対して教団の採るべき対応策を考えることも重要なテーマです。
これまでのテーマ)葬祭の現状調査/国内・海外の開教/過疎地寺院の問題/次世代継承の問題/生命倫理問題への対応(脳死臓器移植、生殖補助医療、再生医療)/浄土宗寺院の社会福祉・公益性/終末期医療への対応/自然災害への教団としての対応、など
近年、宗議会においても浄土宗における授戒会のあり方に対して、肯定的な意見と否定的な意見があることが指摘されており、現在、宗内における授戒会の位置づけや意義が定まっていないのが現状である。このような現状も授戒会の開筵率の低さに影響を及ぼしている可能性がある。
そこで、当研究班では、まず円頓戒の基本的な概念について浄土宗内外の有識者を講師に招聘し、講義を伺ったが、浄土宗の戒体説は色法戒体説であるにも関わらず、講師によって「戒体」や「念仏と戒との関係」をはじめとする円頓戒の基本的な概念の捉え方が様々であった。その講師による円頓戒の基本的な概念の相違を所内向けの内部資料として報告し、研究班のメンバー内で教学面から授戒会開筵に向けての問題点等を共有した。
現在、内部資料をもとに円頓戒の実践という観点から、授戒会の現場で、如何なる儀式・説戒が有効か検討中である。また、今後の授戒会のあり方として、少人数(1人~2人)でも可能な授戒会、短期間でも可能な1日授戒会など、受者の対象や授戒の目的に合わせたいくつかのパターンの授戒会も検討中である。
【構成員】
■研究主務:井野周隆
■所員:齊藤舜健・市川定敬・田中芳道・柴田泰山・八橋秀法
■研究スタッフ: 粟飯原岳志・安達俊英・伊藤茂樹・岩井正道・上野忠昭・鵜飼秀徳・角野玄樹・善裕昭・曽田俊弘・田中裕成・中川正業・南宏信
寺檀関係を如何に継続していくか、またお念仏の信仰を如何に継承していくかについて考えることは喫急の課題である。これらの問題意識を踏襲したうえで、令和2,3年度には、ネクストステージへの儀礼の創造に関する研究に取り組みたい。
ここでのネクストステージとは凡そ50代中盤から60代中盤の世代を指し、具体的には、①親の葬儀の喪主となり、寺檀関係の後継者として密に関わり始める人 ②①の兄弟姉妹や縁者で、定年退職を迎えそろそろ自分の今後を考え始める人々を指す。
これらの世代の人々に対して、法然上人のみ教えを伝える機縁として、法然上人の生涯になぞらえた法然上人・阿弥陀仏と縁を結ぶための新たな儀礼を創造し提唱したい。またこれらの人々には、法然上人や浄土宗、あるいは仏事の基礎知識などを簡易に伝えるためのセミナー等も必要であろう。そのためのセミナー資料作成も併せて行う。
【構成員】
■研究主務:名和清隆
■所員:袖山榮輝・東海林良昌・宮坂直樹・和田典善・工藤量導
■研究スタッフ:武田道生・菅波正行・鍵小野和敬・石上壽應
浄土宗における対人援助のあり方や具体的な方法について研究考察し、カウンセリングの活用を念頭に置きつつ、推奨できる形式について提言していきたい。この研究は、檀信徒を中心に浄土宗寺院の僧侶及び寺庭が普段の活動の中で役立てることができる内容を提示することを主たる目的とする。本年度においては、実践編のプログラムを作成する。
【構成員】
■研究代表:石川到覚
■研究主務:曽根宣雄
■所員:宮坂直樹・郡嶋昭示・春本龍彬
■研究スタッフ:曽田俊弘・大河内大博・大島慎也・樋口広思・高瀬顕功・籠島浩貴・平間俊宏・小野静法
科学技術の進展と社会への普及によって生じる浄土宗寺院の教化・運営の課題を把握、宗門および各寺院での対応について考えてゆく。
令和2・3年度は「ゲノム編集」を取り上げる。初年度はゲノム編集のメカニズムや応用が進む現状、安全性や環境への影響といった一般的な問題点について基礎的な調査を行った。本年度はゲノム編集が社会のあり方や私たちの意識・価値観に及ぼす影響について検討する。
【構成員】
■研究主務:吉田淳雄
■所員:今岡達雄・戸松義晴・袖山榮輝・林田康順・工藤量導・若林隆仁
■研究スタッフ:坂上雅翁・水谷浩志・伊藤竜信・熊谷信是・岡崎秀麿・平子泰弘
本研究では、公的セクターと共同しながら宗内各地で広がっている草の根のFBO活動「お寺での介護者カフェ」をそれぞれの寺院の活動に限定させることなく、地域を超えて行われ、より力強い結びつきを持った活動として発展させることを企図している。
研究成果は、宗内寺院が超高齢社会における身近な地域課題(当事者となる可能性も含める)としての「介護者」への支援に取り組むこと、そしてそれぞれの寺院での活動の地域を超えた連携を行うことで、より大きな社会課題としての介護者支援に浄土宗が役割を果たすことへと結びつくと思われる。また、教師養成においてこれまで培った介護者支援についての学びや実習を取り入れることにより、いのちに向き合う人材を育成することも期待できる。
さらに本研究は、浄土宗21世紀劈頭宣言における「社会に慈しみを」、浄土宗開宗八百五十年キャッチコピー「お念佛からはじまるしあわせ」を体現する活動として展開する可能性を持っていると言えよう。
【構成員】
■研究主務:東海林良昌
■所員:中野孝昭・名和清隆・田中芳道・吉田淳雄・宮入良光・工藤量導・大橋雄人
■研究スタッフ:伊藤竜信・岩田照賢・小川有閑・下村達郎・高瀬顕功・石井綾月・小林惇道・山下千朝
浄土宗は多くの宗立宗門学校を抱えている。毎年数千人の生徒を相手に仏教教育を行っているこれらの学校現場は「教化の最前線のひとつ」でもあり、その経験や事例の中には、代の若者が興味を持つ内容、生徒の悩みの解決に寄与した内容など、「中高生世代への教化」という点で多くの知見を有していると考えられる。
そこで本研究班は、担当の教学部と連携を取りながら、こうした宗立宗門学校の仏教教育の内容調査を通して、以下の2点を目標とする。
① 全国の浄土宗寺院と浄土宗教師が中高生世代の檀信徒への教化にあたって有効な仏教の要素を明らかにしていくこと。
② 学校間で種々の情報交換を行うことにより、次世代への教化の最前線の場でもある宗立宗門学校での仏教教育の充実に寄与すること合わせて各校で情報を共有できるプラットフォームについて考察する。
【構成員】
■研究主務:宮坂直樹
■所員:今岡達雄・袖山榮輝・林田康順・名和清隆・工藤量導・石田一裕・青木篤史
■研究スタッフ:大屋正順・神田眞雄・齋藤知明・髙瀨顕功・平間理俊・宮田恒順・渡邉龍彦
本研究会の目的は、LGBTQの問題に関する最新の情報、とくに各宗教団体がどのような対応を行っているのかを調査し、それをふまえて法然上人の平等思想を基底とする浄土宗寺院および教団がこの問題といかに関わり、社会に対してどのようなメッセージを伝えてゆくべきかを検討して提言することである。
浄土宗の寺院が誰にとっても足が運びやすく、僧侶が安心の存在であるために、教学・布教・法式の各分野においてどのような点に配慮すべきかをまとめる。
本宗の施策立案に還元できる内容としては、浄土宗人権センター、浄土宗平和協会、広報(社会部)における啓発活動への助言である。
【構成員】
■研究主務:工藤量導
■所員:東海林良昌・石田一裕・宮坂直樹・ 宮入良光・大橋雄人・青木篤史・ 若林隆仁
■研究スタッフ:関光恵・中村吉基・西村宏堂・服部祐淳・山下千朝・吉水岳彦
教学、布教、法式の基本的知見を布教教化に応用するための研究。経典や御法語の研究成果を現代社会に対応した念仏生活の指針としてまとめ上げる、念仏を弘めていくための幅広い布教活動を取り上げる、伝統的な法要を音声や建築などさまざまな観点から見直す、など様々なことが研究テーマとなります。
これまでのテーマ)浄土宗典籍の英訳/『続浄土宗全書』の電子テキスト化/『縁の手帖』の作成/浄土宗の近世・近現代史の研究/僧侶生活訓の作成/パネルシアターの作成/法話に対する一般聴者のアンケート調査/新たな法要の作成・実演/日常勤行式の多言語化、など
『和語灯録』に所収される法然上人御遺文の現代語訳は、宗学・教学の興隆に寄与するばかりでなく、布教の充実に直結し、本宗の一層の教線拡大を促すこととなるであろう。
【構成員】
■研究主務:林田康順
■所員:袖山榮輝・曽根宣雄・和田典善・東海林良昌・佐藤堅正・石田一裕・郡嶋昭示・工藤量導・大橋雄人・春本龍彬・青木篤史
■研究スタッフ:石川琢道・吉水岳彦・石上壽應・杉山裕俊
京都分室ではこれまで、『日常勤行式』の多言語化研究を通して、海外開教区との繋がりを築いてきた。そして現在は、各国語の翻訳体制を整え、「表白・引導の多言語化研究」を通して、海外開教区での儀式等に使われる引導、表白等の文例の翻訳を行っている。浄土宗の教えを海外開教区の次世代に繋げていくことを目的として、今後は、海外開教使養成研究と「表白・引導の多言語化研究」を併行して行っていく。実際に海外在住で日本語を話せないの人々の中にも、僧侶になることを希望する人も現れてきている。こうした要望に応え、日本人以外の人材も僧侶として育成できるための基盤を構築する可能性を模索したい。
【構成員】
■研究主務:田中芳道
■所員:齊藤舜健・井野周隆・市川定敬・八橋秀法
■研究スタッフ:石川広宣・岩井正道・角野玄樹・下村達郎・林雅清・原マリ・吹田隆徳・前田信剛・南宏信
本研究はパーリ聖典の中阿含経を中心に釈尊の言葉を現代語訳し、それを踏まえたキャッチフレーズを作成する。このキャッチフレーズは各寺院の掲示伝道、あるいはSNSなどで活用されることを念頭に置いたものである。
また実際にこの目的として、浄土宗ホームページ内の「こころがちょっとかるくなるブッダのことば」、和合「釈尊幸せの智慧」などで活用されている。
馬場紀寿『初期仏教:ブッダの思想をたどる』(岩波書店)などによって見直される初期仏教研究の成果を、原典の現代語訳を通じて、浄土宗の広報・布教に役立てることを目的とする。
【構成員】
■研究主務:石田一裕
■所員:袖山榮輝・佐藤堅正・北條竜士・春本龍彬
■研究スタッフ:渡邉眞儀
本プロジェクトは浄土宗21世紀劈頭宣言である「愚者の自覚を 家庭にみ仏の光を 社会に慈しみを 世界に共生きを」の理念に基づき、浄土宗の教えを典籍の翻訳作業、出版、デジタル媒体での公表、国際学会での発表、海外研究者や仏教者との交流を通じて、国内はもちろん世界へ劈頭宣言を発信することを目的とする。作業内容としては①「和語灯録」の英訳作業、②『観経疏』の英訳作業、③英訳『四十八巻伝』の公表作業、④AI翻訳の研究を19浄土宗宗報 令和3年7月報告行う。〔④AI翻訳の研究について〕これまで浄土宗基本典籍の英訳作業で積み上げてきた知識・情報は翻訳者やプロジェクト研究員の個人的な知識、経験、ネットワークに依存する傾向にある。近い将来、翻訳者、研究員の世代交代が必要なことは明白である。今まで培ってきた英訳のノウハウについてAI技術を利用したデータ処理により次世代に引き継ぎ、誰が担当しても現在までの知見を活かした翻訳作業の可能性を探求する。
【構成員】
■研究主務:北條竜士
■所員:戸松義晴・齊藤舜健・柴田泰山・佐藤堅正・石田一裕・春本龍彬・青木篤史
■研究スタッフ:安孫子稔章・里見奎周・ジョナサンワッツ・髙瀨顕功・渡辺眞儀・平間理俊・マークブラム
本研究は『浄土宗聖典』に収録されていない基本典籍を、多くの人の手に取りやすくするために、①書き下し文の作成、②カナかえり点つきの翻刻 を作成することを目的とする(浄全所収当該典籍は返り点のみの翻刻であり初学には不向きであるため)。具体的には『良忠上人伝』の書き下しと翻刻を行っていきたい。
【構成員】
■研究主務:郡嶋昭示
■所員:吉田淳雄・青木篤史
■研究スタッフ:伊藤茂樹
今年度は、これまでに開発し、運用しているコンピュータシステムの保守・管理を引き続き行いながら、新たな典籍の電子テキスト化を行い、デジタルアーカイブ構築を目指して研究を進める。常に、この分野における仏教界の牽引役を自任し、他教団のシステムとの連携も視野に入れて活動する。
当研究会で保守・管理している浄土宗全書テキストデータベース、WEB版新纂浄土宗大辞典は、浄土学研究者が研究の発展のために用いるのみならず、広く一般の浄土宗教師が檀信徒教化の材料として大いに役立てることをも目的としている。
【構成員】
■研究主務:佐藤堅正
■所員:齊藤舜健・柴田泰山・市川定敬・大橋雄人・工藤量導・春本龍彬
■研究スタッフ:石川琢道・後藤真法
教学、布教、法式の基礎的な研究。浄土宗基本典籍の現代語訳の作成や布教および法式に関する伝統的な資料の活用など、多人数で取り組むべきテーマが中心となります。また、布教と法式の研究的な側面に関する宗内唯一の機関であり、重要資料のアーカイブも行っています。平成28年には教学・布教・法式の各分野の研究者が協力して『新纂浄土宗大辞典』が出版されました。
これまでのテーマ)浄土宗大辞典の編纂/浄土宗典籍の現代語訳(浄土三部経、『法然上人行状絵図』、善導『観経疏』、法然上人ご法語)/阿弥陀仏の表現/五重相伝・授戒会の実態調査/近世布教指南書の現代語訳/声明・特殊法要の研究/講式の再現/伝統的葬送儀礼の調査、など
儀礼の伝承は経本法則本とそれを修してきた寺院と、それに関わる人の記憶によって伝承されている。本研究班ではそれらを映像化し、それぞれで修すための参考となるものとしたい。
法式は『法要集』に基づいて行なうことになっており、現在は『法要集』の威儀部・犍稚部及び「日常勤行式」は映像化されているが、差定部に所載の各種法要は映像化されていない。主だった法要次第を映像化し、設えなども含め、地域性、独自性を持たせず、基本に忠実なものとして、今後修する場合の参考となるものとし、保存目的とする。
また、合わせて研究所にて以前に撮影、録音されてきたものをデータ化し保存を行い、それらを検索可能にする。
【構成員】
■研究主務:中野孝昭
■所員:西城宗隆・荒木信道・柴田泰山・八橋秀法・石田一裕・若林隆仁・大橋雄人・青木篤史
■研究スタッフ:粟飯原岳志・青木玄秀・井川直樹・井上良昭・坂上典翁・清水秀浩・山本晴雄・遠田憲弘・八尾敬俊・吉原寛樹
特に初学の教師に、年回法要や季節の行事法要などの機会に法話に親しんでもらえるよう、偈文の解説や法話のポイントを分かり易い形にまとめ、提案・報告する。
また、寺報・掲示物・ホームページ等作成の際の参考になればと考えている。結果として檀信徒の方々に、本宗の教旨・法要の意義等、より深い信仰と理解を得ていただくことを目的とする。自宅御仏前における日々のお勤めの一助ともなれば、幸甚である
※なお法具や作法についても、必要あらば触れる。※法話が単なる解説にならぬように、原典を頂戴することなど、“法話における注意点”や“法話の意義”について、昨年度までの研究報告を援用しつつ報告にまとめる。
【構成員】
■研究主務:宮入良光
■所員:郡嶋昭示・井野周隆・北條竜士・青木篤史
■研究スタッフ:大髙源明・岩井正道・工藤大樹・後藤真法・遠田憲弘・中川正業・宮田恒順・八木英哉・山田紹隆
善導大師の『観経疏』の全文現代語訳は以前から学界はもとより、浄土宗寺院の現場からもその必要性が強く要請されていた。本プロジェクトの遂行により、内外に浄土宗の教学水準を提示することができるとともに、今後はこの現代語訳が『観経疏』研究の指針となっていく。
また教化の現場にあっては、善導大師の教えや言葉を具体的に分かりやすく理解する一助となるとともに、伝法の現場にあっ報 告ても凡入報土の本義を理解する一助となる。また来たる善導大師1350年遠忌を記念して、『観経疏』全文の訳註を上梓する予定でもある。
【構成員】
■研究主務:柴田泰山
■所員:工藤量導
■研究スタッフ:石上壽應・坂上雅翁・石上壽應・長尾光恵
①『三部経随聞講録』:義山『随聞講録』と観徹『合讃』を対照し、浄土三部経の標準的解釈を容易に知ることができるための資料を提供する。令和3年度は、『無量寿経』について作業を終える。
②人物志:江戸初年から元禄時代までの浄土宗関連人物を一覧し、『新纂浄土宗大辞典』を補完する資料を提供する。
③貞極研究:必要な資料と情報の収集・整理と共に、『四休菴貞極全集』の精読を行う。
【構成員】
■研究主務:八橋秀法
■所員:齊藤舜健・市川定敬・井野周隆・田中芳道
■研究スタッフ:粟飯原岳志・伊藤茂樹・岩井正道・岩谷隆法・小川法道・角野玄樹・曽田俊弘・陳敏齢・永田真隆・松尾善匠・南宏信
浄土宗の各部局から委託を受けて行う研究プロジェクトである。
研究会の目的は、SDGsと各宗派団体がどのような対応を行っているのかを調査し、そのうえで法然上人の教え、あるいは21世紀劈頭宣言(愚者の自覚を/家庭にみ仏の光を/社会に慈しみを/世界に共生を)を基底とする浄土宗教団がこの問題といかに関わり、社会に対してどのようなメッセージを伝えてゆくべきかを検討し、提言することである。
検討によって得られた理念にもとづき、宗務事務所としてできる取り組みや支援のあり方を具体的にまとめて報告書を提出する。
【構成員】
■研究代表:小澤憲珠
■研究主務:工藤量導
■所員:今岡達雄・戸松義晴・東海林良昌・ 名和清隆・石田一裕・大橋雄人・ 若林隆仁