令和2年度

総合研究プロジェクト

現代社会と浄土宗寺院や教師との関連で生じる課題の研究。葬祭や開教など信仰に直結した研究テーマに加えて、寺院や教師が大きな翻弄されるような急激な社会変化に対して教団の採るべき対応策を考えることも重要なテーマです。

 

これまでのテーマ)葬祭の現状調査/国内・海外の開教/過疎地寺院の問題/次世代継承の問題/生命倫理問題への対応(脳死臓器移植、生殖補助医療、再生医療)/浄土宗寺院の社会福祉・公益性/終末期医療への対応/自然災害への教団としての対応、など

現代社会における戒と倫理 ―授戒の意義―

本研究班では、宗内の教学・布教・法戒の分野における様々な見解を整理し、授戒会実施に向けてのコアとなる部分を提言し、各寺院に授戒会実施を促していきたい。

 

また、授戒会を通し、受者に広く戒の実践がなされてこそ意義があるが、実際は戒が実践されていないどころか、十重禁戒等の戒の一々の条項さえ失念されているのが現状である。そこで、どうすれば受者に十重禁戒等の戒を意識してもらえるか、ひいてはどうすれば少しでも実践可能か、ということについて、授戒後の持戒のありようについても、例えば、浄土宗に伝わる布薩などの法要儀礼を通して、検討していきたい。

 

【構成員】

■研究主務:井野周隆

■所員:齊藤舜健・市川定敬・田中芳道・柴田泰山・八橋秀法

■研究スタッフ:南宏信・曽田俊弘・伊藤茂樹・安達俊英・善裕昭・上野忠昭・中川正業・鵜飼秀徳・粟飯原岳志・角野玄樹・岩井正道

次世代継承に関する研究

現在、イエ制度の衰退に伴う葬送や墓制に対する意識の変化、また居住地の移動や2,3世代同居率の低下に伴い、家庭内での信仰継承が困難な状況が生じている。開宗850年を迎えるにあたり、寺檀関係を如何に継続していくか、またお念仏の信仰を如何に継承していくかについて考えることは喫緊の課題である。

 

40代中盤から60代中盤の世代、特に①…既存の檀信徒のなかで親の葬儀の喪主となり、寺檀関係の後継者として密に関わり始める人、②…①の兄弟姉妹や縁者で、定年退職を迎えそろそろ自分の今後を考え始める人々に対して、法然上人のみ教えを伝える機縁として、法然上人の生涯になぞらえた法然上人・阿弥陀仏と縁を結ぶための新たな儀礼を創造し提唱したい。

 

またこれらの人々には、法然上人や浄土宗、あるいは仏事の基礎知識などを簡易に伝えるための資料も必要であろう。そのためのハンドブック作成も考えている。

 

【構成員】

■研究主務:名和清隆

■所員:袖山榮輝・東海林良昌・宮坂直樹・和田典善・工藤量導

■研究スタッフ:武田道生・菅波正行・鍵小野和敬・石上壽應

浄土宗寺院における対人援助の研究 ―浄土宗カウンセリング―

浄土宗における対人援助のあり方や具体的な方法について研究考察し、カウンセリングの活用を念頭に置きつつ、推奨できる形式について提言していきたい。この研究は、檀信徒を中心に浄土宗寺院の僧侶及び寺庭が普段の活動の中で役立てることができる内容を提示することを主たる目的とする。

 

【構成員】

■研究代表:石川到覚

■研究主務:曽根宣雄

■所員:宮坂直樹・郡嶋昭示・春本龍彬

■研究スタッフ:曽田俊弘・大河内大博・大島慎也・樋口広思・高瀬顕功・籠島浩貴・ 星俊明・平間俊宏・小野静法

科学技術の進展に伴う社会の変化と浄土宗の対応

科学技術の進展と社会への普及によって生じる浄土宗寺院の教化・運営の課題を把握、宗門および各寺院での対応について考えていきたい。

 

令和2年度は、DNAに記録された遺伝情報(ゲノム)を自在に書き換える技術である「ゲノム編集」を研究対象とする。すでに1970年代に「遺伝子組み換え」の技術が確立されていたが、効率性や確実性に難があり、莫大なコストを要していたため、普及には自ずとブレーキがかかっていた。それを一変させたのが「ゲノム編集」技術、とりわけ「クリスパー」と呼ばれる最新の手法である。クリスパーは、ゲノム情報を確実にピンポイントで「編集」できる確実性、ウイルスから人間まで適用できる汎用性、特別な技術・修練を必要としない操作性など優れた特性を持ち、研究開発に要するコストを大幅に圧縮できる。「夢の技術」クリスパーは、研究領域だけでなく産業領域とくに農業分野と医療分野での活用が急速に進みつつある。

 

ゲノム編集は「神の領域」に人間が踏み込む行為ともいわれる。とくに次世代以降へと継承される箇所(遺伝子)を安易に書き換えること、それが自然界に放散されることに対しては、予期せぬ結果をもたらしかねないという強い懸念もある。また生殖医療に導入された場合、家族のあり方や人間関係に対する意識をも変えかねない。慎重な議論を求める声も強いものの、莫大な利益が見込めることから競争も激しく、見切り発車的に応用競争が始まっているのが現状である。宗教者としても、ゲノム編集の技術面やメリット・デメリットを正しく理解し、技術の進展・普及と社会への影響を注視することが必要かつ重要と考える。

 

【構成員】

■研究主務:吉田淳雄

■所員:今岡達雄・戸松義晴・袖山榮輝・林田康順・工藤量導・若林隆仁

■研究スタッフ:坂上雅翁・水谷浩志・伊藤竜信・熊谷信是・岡崎秀麿

浄土宗寺院における社会事業の地域間連携

本研究は浄土宗寺院で行われている社会事業の地域を超えた連携の可能性を示すことを目的とする。我々は前期研究プロジェクト「超高齢社会における浄土宗寺院の可能性」において成果として提案した「お寺での介護者カフェ」を浄土宗内における新たなFBO(Faith Based Organization:信仰を基にする対社会の活動団体)形成の動きであると捉えている。

 

現在、北海道第一教区一カ寺、宮城教区三カ寺、山形教区一カ寺、埼玉教区一カ寺、東京教区四カ寺、静岡教区四カ寺、京都教区一カ寺、大阪教区一カ寺、三州教区一カ寺の一七カ寺においてカフェが開催され、各地域において「お寺でのカフェは温かみがある」、「ご住職に親身にお話を聴いていただいた」、「心が軽くなった」という参加者からの感謝の言葉が寄せられている。これは「お寺での介護者カフェ」の取り組みを通じて寺院と檀信徒および地域住民との信頼関係が結び直されていることを示している。

 

また、カフェによっては、地域包括支援センターや社会福祉協議会などの公的セクター、医療従事者、介護関係者との協力関係も生まれている。これは浄土宗二十一世紀劈頭宣言における「社会に慈しみを」、浄土宗開宗八五〇年キャッチコピー「お念佛からはじまるしあわせ」を体現する活動であるとも言えよう。

 

本研究では、先に述べたような宗内各地で広がっている草の根のFBO活動「お寺での介護者カフェ」を継続調査しつつ、それらの寺院の活動が、広く地域を超えて連携することで参加者、各カフェ、社会にどのような積極的効果をもたらすのかについて研究することで、浄土宗寺院における社会事業の地域間連携の可能性を明らかにしていきたい。

 

【構成員】

■研究主務:東海林良昌

■所員:中野孝昭・名和清隆・田中芳道・吉田淳雄・宮入良光・工藤量導・大橋雄人

■研究スタッフ:伊藤竜信・岩田照賢・小川有閑・下村達郎・高瀬顕功・石井綾月・小林惇道

宗立宗門学校における仏教教育

浄土宗は多くの宗立宗門学校を抱えており、そこでの経験や事例の中には、10代の若者が興味を持つ内容、生徒の悩みの解決に寄与した内容など、「中高生世代への教化」という点で多くの知見を有していると考えられる。

 

そこで本研究班は、担当の教学部と連携を取りながら、こうした宗立宗門学校の仏教教育の内容調査を通して、①全国の浄土宗寺院と浄土宗教師が中高生世代の檀信徒への教化にあたって有効な仏教の要素を明らかにしていくこと、②学校間で種々の情報交換を行うことにより、次世代への教化の最前線の場でもある宗立宗門学校での仏教教育の充実に寄与すること、を目的とする。合わせて情報を共有できるプラットフォームについて考察する。

 

【構成員】

■研究主務:宮坂直樹

■所員:今岡達雄・袖山榮輝・林田康順・名和清隆・工藤量導・石田一裕・青木篤史

■研究スタッフ:高瀬顕功・大屋正順・平間理俊・神田眞雄・渡邉龍彦

応用研究プロジェクト

教学、布教、法式の基本的知見を布教教化に応用するための研究。経典や御法語の研究成果を現代社会に対応した念仏生活の指針としてまとめ上げる、念仏を弘めていくための幅広い布教活動を取り上げる、伝統的な法要を音声や建築などさまざまな観点から見直す、など様々なことが研究テーマとなります。

 

これまでのテーマ)浄土宗典籍の英訳/『続浄土宗全書』の電子テキスト化/『縁の手帖』の作成/浄土宗の近世・近現代史の研究/僧侶生活訓の作成/パネルシアターの作成/法話に対する一般聴者のアンケート調査/新たな法要の作成・実演/日常勤行式の多言語化、など

「和語灯録」現代語訳の研究

「浄土宗聖典」所収の基本典籍の現代語訳は、宗学・教学の研究、布教現場などにおいて必需であり、その充実を期すため、『和語灯録』(「同」4巻所収)の現代語訳を進めていきたい。

 

令和2年度については、『黒谷上人語灯録』巻第十二(和語第二之二 当巻に五篇あり)」前半の現代語訳を進めたい。

 

【構成員】

■研究主務:林田康順

■所員:袖山榮輝・曽根宣雄・和田典善・東海林良昌・佐藤堅正・石田一裕・郡嶋昭示・工藤量導・大橋雄人・春本龍彬・青木篤史

■研究スタッフ:石川琢道・吉水岳彦・石上壽應・杉山裕俊

海外開教使養成研究及び海外開教区用儀式文例作成

徳川幕府による鎖国が解かれた明治時代。多くの日本国民は海外移住に希望を見出した。それはアジアの各国に始まり、のちにハワイ、北米、南米へと広がった。日本仏教は移民を追うように、現地に寺院を建立し、布教を行なった。それが海外開教の始まりである。

 

しかし、のちに勃発する世界大戦により、日本人移民は迫害を受けることとなり、これは大切な文化である日本語の伝承に多大なる影響を及ぼした。最初の移住から百年以上が経った現在、その影響は特に日系四世、五世の世代に顕著で、彼らは日本語がほぼ理解できなくなっている。このことは、現地の僧侶と檀家の間のコミュニケーションにおいて、大きな壁となっている。

 

京都分室ではこれまで日常勤行式の多言語化研究を通し、海外開教区とのつながりを築いてきた。また、各国語の翻訳体制も整っている。

 

次の世代につなげるために、本研究と「表白・引導の多言語化研究」を併行し、海外開教区が儀式等に使われる引導、表白のような文例の翻訳を引き続き行う。

 

今日、インターネットを通じて法然上人のみ教えが世界中の人々に知られるようになってきており、『浄土宗21世紀劈頭宣言』の「世界に共生を」のスローガンが、現実のものとなりつつある。実際にインターネットを通して浄土宗の教えに触れた海外の人々の中に僧侶になりたいという人も現れてきている。浄土宗としてもこうした要望に応え、日本人以外の者を僧侶として育成できる基礎を構築することが可能であれば、海外開教の発展を力強く推し進めることになると考える。

 

【構成員】

■研究主務:田中芳道

■所員:齊藤舜健・井野周隆・市川定敬・八橋秀法

■研究スタッフ:南宏信・前田信剛・下村達郎・林雅清・原マリ・角野玄樹・石川広宣

釈尊聖語の広報・布教用現代語訳研究

現在ダンマパダの翻訳として、中村元『ブッダの真理のことば』(岩波書店、1978)が一般的である。この書に関しては、訳者自身が「この書の現意を表現することにつとめた」というように、特定の教団の視座を排したものである。しかしながら片山一良『『ダンマパダ』全詩解説―仏祖に学ぶひとすじの道』(大蔵出版、2009)のように、特定の宗派の立場から『ダンマパダ』を読解し直そうという試もなされている。

 

また、現在、パーリ語経典をはじめ様々な初期仏教の経典が現代語訳され、そのような立場に基づいた研究書や入門書も多数出版されている。そのような中で、浄土宗の教えとそのような仏教の教えがどのような関係にあるかという疑問も生まれてくる。

 

本プロジェクトでは、パーリ聖典の読解を行い、浄土宗の教えと共通する経文を選定し、初期仏教との宗教的な共通点を探っていく。そしてその経文に対して、解説を加えることで、上述の疑問点を解消することを目的とする。

 

【構成員】

■研究主務:石田一裕

■所員:袖山榮輝・佐藤堅正・北條竜士・春本龍彬

■研究スタッフ:渡邉眞儀

浄土宗基本典籍の英訳研究

本研究班は『浄土宗聖典』(浄土宗出版)の英訳版の完成を目的とし、現在は『和語燈録』『観経疏』『四十八巻伝』の英訳作業とその公開を目指す。

 

①『和語燈録』の英訳作業

これまでの英訳作業完了分(3/4)のうち、『和語燈録』第1巻(黒谷上人語燈録巻第11、『浄土宗聖典』第4巻、pp.283-321、38㌻分)の出版もしくはウェブ公開を目指す。また最終計画では英訳『和語燈録』(『浄土宗聖典』第4巻

英訳版)として3分冊での出版もしくはウェブ公開を目指す。

 

②『観経疏』の英訳作業

これまで玄義分、序文義、定善義の英訳作業が完了し、本年度は散善義の英訳作業を開始する。

 

③英訳『四十八巻伝』の公表作業

これまでにHarper H. Coates and Ryugaku Ishizuka『Honen the Buddhist saint : his life and teaching』の英語本文の改訂編集作業が終了し、本年度内に浄土宗総合研究所ホームページでのウェブ公開を目指す。

 

④学会発表

9月開催予定の浄土宗学術大会にてポスター発表もしくはパネル発表、個人発表をする。また本年度は英訳『和語燈録』の出版作業に集中するため、国際学会での発表はせず、参加のみ。

 

⑤AI翻訳のための調査・情報収集

(1)機械翻訳の有用性(信頼度・蓄積された知識の共通化など)の確認

(2)現在の技術水準での機械翻訳の限界の把握

 

【構成員】

■研究主務:北條竜士

■所員:戸松義晴・齊藤舜健・佐藤堅正・石田一裕・春本龍彬

■研究スタッフ:平間理俊・安孫子稔章・マーク・ブラム・ジョナサン・ワッツ・峯崎就裕・髙瀬顕功・里見奎周

浄土宗祖師の諸伝記の研究

浄土宗の基本典籍のなか、書き下しとして上梓されているものは『浄土宗聖典』がある。碩学の尽力によってまとめられたものであり、その価値は高い。

 

しかし、収録されているものを見渡すと、法然上人の文献は『選択集』と『和語灯録』、善導大師の文献は『観経疏』、聖光上人のものは『授手印』と『徹選択集』と、限られたものでもある。おそらく多くの教師の中には、手に取りたくても『浄土宗全書』などを紐解くしかないのではないだろうか。

 

そこで、手に取りたいと思われるものを広く参照できるようにするため、基本典籍の書き下し作業を行いたい。今期は祖師の伝記資料の作業を行っていきたい。

 

二祖聖光上人、三祖良忠上人の伝記は『浄土宗全書』本にはカナがふられておらず、初学の者には不親切であるため、広く参照されるものを作成し、まずは『教化研究』で報告して行きたいと考えている。

 

【構成員】

■研究主務:郡嶋昭示

■所員:吉田淳雄・青木篤史

■研究スタッフ:伊藤茂樹

浄土宗関連情報デジタルアーカイブ研究

情報化の進展に伴い、浄土宗学・仏教学・宗教学・宗教社会学などを含む人文科学分野の研究においても、情報処理技術を駆使して基本的な典籍を調査分析する方法論が一般的になってきた。このような調査分析方法を用いるためには、典籍が電子的情報に変換(電子テキスト化)されている必要がある。情報技術はさらに進み、最近ではテキスト・画像・音声・映像がデジタル化された情報として保存されているデジタルアーカイブが作られている。

 

宗教教団の中では浄土宗の情報デジタル化は進んでいる。しかし、大学や研究機関といった一般の組織あるいは世の中一般と比べると、まだまだできることが多く残されている状況と言ってよい。

 

本研究会は、これまで、わが宗の宗典を統一的なデータ形式に基づいて電子化すべく、電子テキスト化の基本的な研究を行ってきた。さらに進んで、浄土宗に関係するあらゆる資料を、デジタルデータとして保存するデジタルアーカイブを構築するのに必要な仕組みを確立したい。現在はそのための基礎的研究を行なっている。

 

今年度は、これまでに開発し、運用しているコンピュータシステムの保守・管理を引き続き行いながら、新たな典籍の電子テキスト化を行い、デジタルアーカイブ構築を目指して研究を進める。常に、この分野における仏教界の牽引役を自任し、他教団のシステムとの連携も視野に入れて活動する。具体的には以下の作業を予定している。

 

・浄土宗全書テキストデータベースの改良・保守・管理

・Web版『新纂浄土宗大辞典』の改良・保守・管理

・大本山増上寺所蔵三大蔵経デジタルデータ公開の方法・保守管理方法の検討

・浄土宗関連典籍の電子テキスト化

・公開講座の開催などの情報発信・普及啓蒙活動

・他教団のテキストデータベースとの連携

 

【構成員】

■研究主務:佐藤堅正

■所員:齊藤舜健・柴田泰山・市川定敬・大橋雄人・工藤量導・春本龍彬

■研究スタッフ:石川琢道・後藤真法

基礎研究プロジェクト

教学、布教、法式の基礎的な研究。浄土宗基本典籍の現代語訳の作成や布教および法式に関する伝統的な資料の活用など、多人数で取り組むべきテーマが中心となります。また、布教と法式の研究的な側面に関する宗内唯一の機関であり、重要資料のアーカイブも行っています。平成28年には教学・布教・法式の各分野の研究者が協力して『新纂 浄土宗大辞典』が出版されました。

 

これまでのテーマ)浄土宗大辞典の編纂/浄土宗典籍の現代語訳(浄土三部経、『法然上人行状絵図』、善導『観経疏』、法然上人ご法語)/阿弥陀仏の表現/五重相伝・授戒会の実態調査/近世布教指南書の現代語訳/声明・特殊法要の研究/講式の再現/伝統的葬送儀礼の調査、など

法式研究

法要儀礼の伝承は経本法則本とそれを修してきた寺院と、それに関わる人の記憶によって伝承されている。そこで本研究班ではそれらを映像化し、記録保存していきたい。今までの研究対象としてきた法要はもちろんのこと、古式法要・儀礼等他、現代各寺院で一般に行われている法要の映像化保存する。

 

また法式は『法要集』に基づいて行なうことになっており、現在は『法要集』の威儀部・犍稚部及び「日常勤行式」は映像化されているが、差定部に所載の各種法要は映像化されていない。そこで主だった法要次第を映像化し、設えなども含め、地域性、独自性を持たせず、基本に忠実なものとして、今後修する場合の参考となることを目的とし保存する。

 

本年度はその対象として「半齊供養」を取り上げ、研究を行う。またあわせて研究所にて以前に撮影、録音されてきたものをデータ化し保存を行いたい。

 

【構成員】

■研究主務:中野孝昭

■所員:西城宗隆・荒木信道・柴田泰山・八橋秀法・石田一裕・若林隆仁・青木篤史

■研究スタッフ:坂上典翁・山本晴雄・清水秀浩・粟飯原岳志・井上良昭・八尾敬俊・遠田憲弘

布教研究

当研究班は、寺院・僧侶の布教教化活動について、主に布教師の視点から研究を行う。

 

今年度は、時代の変革期である幕末から明治初期を生きた、岸上恢嶺師(天保一〇年〈一八三九〉―明治一八年〈一八八五〉)について研究する。師は明治初期を代表する布教師であり、浄土宗教校の設立を提唱し宗侶を育成した宗学者でもある。特に師の説教集『説教帷中策』は、当時宗派の垣根を越えて読まれたという。そこで、時代背景も含めて師の思想や布教法を研究し、その布教指針をまとめると共に現在の布教の問題点について提起する。また、師の遺された布教資料を、広く活用しやすいよう整理する。

 

【構成員】

■研究主務:宮入良光

■所員:郡嶋昭示・井野周隆・北條竜士・青木篤史

■研究スタッフ:後藤真法・八木英哉・大髙源明・中川正業・遠田憲弘・宮田恒順・山田紹隆・工藤大樹

教学研究Ⅰ

本研究は、全浄土宗寺院と教師に対して善導大師の『観経疏』の世界と内容をわかりやすく提示することで、全教師が浄土宗の教義と信仰と実践の根幹である善導大師の存在と教えに触れ、そして実際の日々の信仰の現場において善導大師の存在と教えを全世界に発信していくための教義的基盤の形成を目的とした基礎作業である。

 

善導大師の教えに実際に触れることで、全教師が「何故に法然上人が善導大師の全存在を信仰対象とし得たのか」という疑問を有するとともに、この疑問こそが自身が法然上人の教えを追体験的に理解しようとする際の大きな指針となり、そして自身の信仰と実践のさらなる深化への大きなきっかけとなるはずである。

 

このように全教師への啓蒙、および全檀信徒への教化に現場、ひいては伝法の現場における善導大師の必要性を強調することも、本研究の目的である。

 

また先に研究を進めていた聖冏上人の『浄土二蔵頌義』の再検証も行いたい。

 

【構成員】

■研究主務:柴田泰山

■所員:齊藤舜健・袖山榮輝・大橋雄人・工藤量導

■研究スタッフ:坂上雅翁・石上壽應・長尾光恵

教学研究Ⅱ

①『三部経随聞講録』:

浄土三部経の標準的解釈を容易に知ることができるための資料として、本年度は『阿弥陀経』と『無量寿経』について、『随聞講録』書下しと『合讃』との対照テキストを作成する。

 

②人物志:

江戸初年から元禄時代までの浄土宗関連人物について、主に『蓮門精舎旧詞』記載の人物を中心として一覧データを整理し、『新纂浄土宗大辞典』を補完する資料を目指す。

 

③貞極研究:

本年度より、江戸中期の学僧である四休庵貞極についての研究を行う。その準備作業として、必要な資料と情報の収集と整理を行う。

 

【構成員】

■研究主務:八橋秀法

■所員:齊藤舜健・市川定敬・井野周隆・田中芳道

■研究スタッフ:米澤実江子・南宏信・角野玄樹・永田真隆・岩谷隆法・松尾善匠・粟飯原岳志・曽田俊弘・伊藤茂樹・陳敏齢

委託研究プロジェクト

浄土宗の各部局から委託を受けて行う研究プロジェクトである。

三大蔵電子化公開(開宗850年慶讃・教学部委託研究)

大本山増上寺所蔵三大蔵経のうち、宋版と元版はかつて写真撮影が行われマイクロフィッシュが保存されている。これを用いて既にデジタル画像が作成されている。高麗版は、これまで部分的に撮影が行われたことはあるが、全体の撮影が行われたことはない。今年度は高麗版大蔵経のデジタル画像撮影を実施する。

 

【構成員】

■研究主務:佐藤堅正

■所員:齊藤舜健・柴田泰山・市川定敬・大橋雄人・工藤量導

■研究スタッフ:石川琢道

浄土宗におけるデジタル事業の方向性と具体策の研究(社会部委託研究)

本研究班は、社会部の依頼にもとづき組織された浄土宗総合研究所の特別プロジェクトである。浄土宗の広報活動の一環に位置付けられるデジタル事業の方向性と具体策を研究することを目的として発足した。

 

現在、デジタル面では浄土宗関係団体の刊行物などをアーカイブ化、あるいは学術典籍の検索データベースの構築など力を注いでいる。しかしながら、浄土宗としてのトータルビジョンを描けているわけではなく、いくつかの部署が個別に進めている状況である。

 

そこで、浄土宗の将来性を見据えたうえでのデジタル事業の方向性と具体策を検討し、浄土宗教師や一般社会のニーズに沿ったものを効率的・効果的に提供して利便性を高め、さらに社会貢献の一環ともなる広報計画を検討し、企画・提案を行うものとする。

 

【構成員】

■研究主務:工藤量導

■所員:戸松義晴・齊藤舜健・東海林良昌・名和清隆・宮入良光・石田一裕・大橋雄人・春本龍彬・若林隆仁

■研究スタッフ:服部祐淳

宗勢調査の詳細分析(企画調整室委託研究)

第7回宗勢調査においては、すでに発表した『第7回浄土宗宗勢調査報告書』において様々な角度からの分析が施されている。しかしながら、まだ分析の余地を残している。

 

本研究の目的は、宗勢調査で得られた結果に対して更なる分析を加え、具体的な宗務行政、また各寺院の寺院運営に活かすことが出来るレベルでの情報を提供することを目指す。

 

【構成員】

■研究主務:名和清隆

■所員:今岡達雄

■研究スタッフ:石川基樹