令和6年度

総合研究プロジェクト

現代社会と浄土宗寺院や教師との関連で生じる課題の研究。葬祭や開教など信仰に直結した研究テーマに加えて、寺院や教師が大きな翻弄されるような急激な社会変化に対して教団の採るべき対応策を考えることも重要なテーマです。

 

これまでのテーマ)葬祭の現状調査/国内・海外の開教/過疎地寺院の問題/次世代継承の問題/生命倫理問題への対応(脳死臓器移植、生殖補助医療、再生医療)/浄土宗寺院の社会福祉・公益性/終末期医療への対応/自然災害への教団としての対応、など

 

四十八軽戒の現代的理解

現在、浄土宗教師養成課程において、四十八軽戒の戒相まで学ぶ機会は少ない。まず教師自身が、四十八軽戒の条項や一々の戒相を正しく理解したうえで、現代社会に戒の精神を伝え、実践につなげてゆくことが必要であると考える。 そのため当研究班では四十八軽戒のキャチコピーと解説を作成する。

 

【構成員】

■研究主務:井野周隆

■所員:齊藤舜健・市川定敬・田中芳道・柴田泰山・八橋秀法

■研究スタッフ: 粟飯原岳志・安達俊英・伊藤茂樹・岩井正道・上野忠昭・鵜飼秀徳・角野玄樹・善裕昭・曽田俊弘・田中裕成・中川正業・南宏信

次世代継承に関する研究

現在、寺院を取り巻く社会状況が大きく変化しており、「墓じまい」というキーワードがいわば流行語のように扱われるようにもなっている。このような社会状況において、寺院を運営する住職には、これまで求められなかったような寺院運営の知識が求められていると言えるだろう。

このような社会状況のなか、「より良い寺院運営」に必要な点を整理し、その具体的方法を提示することを目的とする。具体的には、檀信徒の情報収集と管理、有効な寺院の広報の仕方、墓地などに関することなど、法律や経営の視点を含め研究していきたい。その成果は、浄土宗僧侶が利用できるハンドブックとして出版することを目指す。

 

【構成員】

■研究主務:名和清隆

■所員: 袖山榮輝・東海林良昌・宮坂直樹・和田典善・工藤量導・大橋雄人

■研究スタッフ: 菅波正行・石上壽應・大屋正順・斎藤唯衣・小路竜嗣

浄土宗寺院における対人支援の研究 ―開く対話と場づくりの指針―

本研究班ではこれからの寺院において開く対話と場(トポス)づくりの指針について研究を行い、その中で法然仏教カウンセリングとの連携についても模索して行きたい。

法然上人の人間観や救済観に立脚した寺院活動を見出すことを大きな目標に掲げ、浄土宗の教えに基づく実践可能な活動を取り上げて研究を進める。特に、地域特性に即した寺院活動において、少しの工夫で実践可能な多様な活動の事例研究を通じ、その場の持つ根源的な意義について研究し、より具体的に活用できるような指標を示す。

 

【構成員】

■研究代表:石川到覚

■研究主務:曽根宣雄

■所員:宮坂直樹・郡嶋昭示・春本龍彬

■研究スタッフ:曽田俊弘・大河内大博・大島慎也・樋口広思・高瀬顕功・籠島浩貴・平間俊宏・小野静法

 

科学技術の進展に伴う社会の変化と浄土宗の対応 ―地球環境への向き合い―

当今はSDGsをはじめ、地球環境に対する社会的な関心と影響が増している。従来、当研究所では人間の「いのち」に関する議論、いわゆる生命倫理の問題として様々な切り口から調査と検討を行ってきたが、人間以外の「いのち」、生態系や地球環境に対する倫理やスタンスについてはほとんど研究がなされていない。よって次年度より、地球環境をめぐる問題をテーマに、議論の歴史や他宗教の動向などを調査し論点を整理したうえで、浄土宗の立場から私たちの向き合い方(考え方や具体的な行動)について検討することにしたい。

地球環境をめぐる議論の歴史やその社会的影響、および他宗教における対応状況について調査研究を行い、浄土宗教師・寺院の対応について検討、その成果を『教化研究』等で発表報告したい。

 

【構成員】

■研究主務:吉田淳雄

■所員:工藤量導・若林隆仁

■研究スタッフ:坂上雅翁・水谷浩志・伊藤竜信・熊谷信是・岡崎秀麿・平子泰弘

浄土宗寺院における社会事業の地域間連携の展開

本研究の目的は、各地にある浄土宗寺院が取り組むことができる具体的な社会貢献の取り組みを促進させることである。そのための都会や地方でのお寺での介護者カフェの多様性を研究することで、開催寺院がどのような形で複数の事業を紐づけて運営しているのかを明らかにすることができる。お寺での介護者カフェ事業を起点にし、地域性に基づいた他の事業との連携が可能であることを紹介することで、未開催寺院や既開催寺院への活動の意義や魅力に関する情報を提供することができる。またお寺での介護者カフェに有用なプログラムの開発や、それに取り組むのにふさわしい人材養成について研究することで、劈頭宣言の「社会に慈しみを」にかなう社会貢献人材の具体像を提供できる。

 

【構成員】

■研究主務:東海林良昌

■所員:中野孝昭・名和清隆・田中芳道・吉田淳雄・宮入良光・大橋雄人

■研究スタッフ:伊藤竜信・岩田照賢・小川有閑・下村達郎・高瀬顕功・石井綾月・小林惇道・山下千朝

宗立宗門学校における仏教教育

当研究班では、

① 情報共有ツールの試験運用後、各校教職員に公開し各教員が使用している教材をアップしていただくよう協力要請を行う。アップされた教材を精査しどのような情報が流れたのかを分析、また区分わけをしていくことで、現場の先生方のアイディア集とする。

② ①を元に各御寺院や浄土宗教師が中高生世代への教化の参考に出来る要素を抽出する。

③ 仏教教育を社会的要請という大きな枠組みで捉えなおし、その意義を再考する(学校内で宗教教育不要論が出る学校もあり、異なるアプローチでのプレゼンスの提示の可能性を探ることが必要だと前年度までの研究により感じたため)ということを目的し、全国の浄土宗寺院の中高生世代への教化に寄与できる情報の作成を行なう。

 

【構成員】

■研究主務:宮坂直樹

■所員:今岡達雄・袖山榮輝・林田康順・名和清隆・工藤量導・石田一裕・青木篤史

■研究スタッフ:大屋正順・神田眞雄・髙瀨顕功・平間理俊・渡邉龍彦・中島正淳

浄土宗の平等思想とLGBTQ

現在、LGBTQへの社会的な関心はより高まっており、小・中・高・大学などの教育機関や各種NPOなどにおける進展はもとより、宗教界および仏教界においても個々の事例ではあるが、少しずつ支援の輪が広がりを見せている。

本研究会の目的は、LGBTQの問題に関する最新の情報、とくに各宗教団体がどのような対応を行っているのかを調査し、それをふまえて法然上人の平等思想を基底とする浄土宗寺院および教団がこの問題といかに関わり、社会に対してどのようなメッセージを伝えてゆくべきかを検討して提言することである。浄土宗の寺院が誰にとっても足が運びやすく、僧侶が安心の存在であるために、教学・布教・法式の各分野においてどのような点に配慮すべきかをまとめる。本宗の施策立案に還元できる内容としては、浄土宗人権センター、浄土宗平和協会、広報(社会部)における啓発活動への助言である。

 

【構成員】

■研究主務:工藤量導

■所員:東海林良昌・石田一裕・宮坂直樹・ 宮入良光・大橋雄人・青木篤史・ 若林隆仁

■研究スタッフ:関光恵・中村吉基・服部祐淳・山下千朝・吉水岳彦・エリカ=バッフェッリ・若麻績憲義・斎藤唯衣

応用研究プロジェクト

教学、布教、法式の基本的知見を布教教化に応用するための研究。経典や御法語の研究成果を現代社会に対応した念仏生活の指針としてまとめ上げる、念仏を弘めていくための幅広い布教活動を取り上げる、伝統的な法要を音声や建築などさまざまな観点から見直す、など様々なことが研究テーマとなります。

 

これまでのテーマ)浄土宗典籍の英訳/『続浄土宗全書』の電子テキスト化/『縁の手帖』の作成/浄土宗の近世・近現代史の研究/僧侶生活訓の作成/パネルシアターの作成/法話に対する一般聴者のアンケート調査/新たな法要の作成・実演/日常勤行式の多言語化、など

 

 

「和語灯録」現代語訳の研究

「浄土宗聖典」所収の基本典籍の現代語訳書籍は、宗学・教学の研究、布教現場などにおいて必需であり、その充実を期すため、継承企画として、『和語灯録』(「同」4巻所収)の現代語訳を進めていきたい。すでに当研究所・ご法語班において、『和語灯録』所収法語の多くが現代語訳されており、そのノウハウ・人的資源も蓄積されている。当プロジェクトでは、それらの資産を大いに活用し、着実に成果を公表し、速やかに刊行を成し遂げていきたい。

 

【構成員】

■研究主務:林田康順

■所員:袖山榮輝・曽根宣雄・和田典善・東海林良昌・佐藤堅正・石田一裕・郡嶋昭示・工藤量導・大橋雄人・青木篤史

■研究スタッフ:石川琢道・吉水岳彦・石上壽應・杉山裕俊・長尾隆寛

外国語浄土宗教化資料の作成

当研究班は、『浄土宗日常勤行式』をはじめ、引導表白を英語、ポルトガル語、イタリア語、フランス語、中国語などに翻訳し、その過程で多言語化研究を通して、海外開教区との繋がりも築き、各言語への翻訳体制が整っている。社会部との連携を前提として海外開教区からの要望に積極的に応えていきたい。加えてインターネットの普及により、外国語で説明できるものが必要と考えている。

当研究は、浄土宗劈頭宣言にある「世界に共生を」を具現化するため、海外にいる人々に、浄土宗の教えとしきたりを周知する。これから日本の寺院が外国人を受け入れる可能性を考えて、日本に住む外国人が理解可能な簡潔な資料の作成を考えている。

 

【構成員】

■研究主務:田中芳道

■所員:齊藤舜健・井野周隆・市川定敬・八橋秀法・北條竜士

■研究スタッフ:石川広宣・岩井正道・林雅清・原マリ・吹田隆徳・前田信剛・南宏信・下端啓介

釈尊聖語の広報・布教用現代語訳研究

本研究の目的は釈尊聖語を通じて開宗850年のキャッチコピー「お念仏からはじまる幸せ」への理解を深めるとともに、その広報や布教のための資料を提示することである。キャッチコピーについては、当研究所よりその解釈を提示した(『教化研究』30号)。本研究はその解釈を踏まえ、釈尊聖語に基づいた仏教的な幸せの理解を示すとともに、三部経や法語との関連を提示する。これは浄土宗教師が日常的な布教を行う際の資料とし活用されることを念頭に置いたものである。またSNSなどによる広報・教化に資するため、原文を踏まえた短いキャッチフレーズを作成する。

 

【構成員】

■研究主務:石田一裕

■所員:袖山榮輝・佐藤堅正・北條竜士・春本龍彬

■研究スタッフ:渡邉眞儀

浄土宗基本典籍の英訳研究

法然、浄土宗関係の英語出版物は極めて少ないため、浄土宗の教えを世界に発信するには、まず浄土宗基本典籍の英訳作業を行い、それらを出版、公表する必要がある。

本プロジェクトは浄土宗21世紀劈頭宣言である「愚者の自覚を 家庭にみ仏の光を 社会に慈しみを 世界に共生きを」の理念に基づき、浄土宗の教えを典籍の翻訳作業、出版、デジタル媒体での公表、国際学会での発表、海外研究者や仏教者との交流を通じて、国内はもちろん世界へ劈頭宣言を発信することを目的とする。

 

【構成員】

■研究主務:北條竜士

■所員:戸松義晴・齊藤舜健・柴田泰山・佐藤堅正・石田一裕・田中芳道・春本龍彬・青木篤史

■研究スタッフ:ジョナサンワッツ・髙瀨顕功・渡辺眞儀・平間理俊・酒井仁成・岩谷隆法・下端啓介・和田良世

■業務委託:マークブラム・ウエイン横山

法然上人漢語文献『無量寿経釈』の研究

宗祖である法然上人の文献が、現代語訳や多言語化されるなど、現代社会に広まるような努力が行われている。それも『浄土宗聖典』に書き下し文・釈文が整理されているからこれらの作業が行いやすくなっているといえよう。

しかし、法然上人の文献の中、『浄土宗聖典』には『選択集』と『和語灯録』『往生機』が掲載されているが、教えの多くが記される『漢語灯録』の作業が行われていない現状がある。そこで本研究会ではこの『漢語灯録』所収の漢文の文献を翻刻・書き下しをし、今後の多くの研究の役に立つことを目指して活動したいと思う。具体的には『無量寿経釈』から作業を行いたい。

 

【構成員】

■研究主務:郡嶋昭示

■所員:吉田淳雄・青木篤史・春本龍彬

■研究スタッフ:伊藤茂樹

浄土宗関連情報デジタルアーカイブ研究

情報化の進展に伴い、浄土宗学・仏教学・宗教学・宗教社会学などを含む人文科学分野の研究においても、情報処理技術を駆使して基本的な典籍を調査分析する方法論が一般的になってきた。

班では、これまでに開発し、運用しているコンピュータシステムの保守・管理を引き続き行いながら、新たな典籍の電子テキスト化を行い、デジタルアーカイブ構築を目指して研究を進める。常に、この分野における仏教界の牽引役を自任し、他教団のシステムとの連携も視野に入れて活動する。また保守・管理している浄土宗全書テキストデータベース、WEB版新纂浄土宗大辞典は、浄土学研究者が研究の発展のために用いるのみならず、広く一般の浄土宗教師が檀信徒教化の材料として大いに役立てることをも目的としている。

 

【構成員】

■研究主務:佐藤堅正

■所員:齊藤舜健・柴田泰山・市川定敬・大橋雄人・工藤量導・春本龍彬・若林隆仁

基礎研究プロジェクト

教学、布教、法式の基礎的な研究。浄土宗基本典籍の現代語訳の作成や布教および法式に関する伝統的な資料の活用など、多人数で取り組むべきテーマが中心となります。また、布教と法式の研究的な側面に関する宗内唯一の機関であり、重要資料のアーカイブも行っています。平成28年には教学・布教・法式の各分野の研究者が協力して『新纂 浄土宗大辞典』が出版されました。

 

これまでのテーマ)浄土宗大辞典の編纂/浄土宗典籍の現代語訳(浄土三部経、『法然上人行状絵図』、善導『観経疏』、法然上人ご法語)/阿弥陀仏の表現/五重相伝・授戒会の実態調査/近世布教指南書の現代語訳/声明・特殊法要の研究/講式の再現/伝統的葬送儀礼の調査、など

 

 

法式研究

儀礼の伝承は経本法則本とそれを修してきた寺院と、それに関わる人の記憶によって伝承されている。本研究班ではそれらを映像化し、それぞれで修すための参考となるものとしたい。法式は『法要集』に基づいて行なうことになっており、現在は『法要集』の威儀部・犍稚部及び「日常勤行式」は映像化されているが、差定部に所載の各種法要は映像化されていない。主だった法要次第を映像化し、設えなども含め、地域性、独自性を持たせず、基本に忠実なものとして、今後修する場合の参考となるものとし、保存目的とする。また合わせて研究所にて以前に撮影、録音されてきたものをデータ化し保存を行い、それらを検索可能にする。

 

【構成員】

■研究主務:中野孝昭

■所員:坂上典翁・荒木信道・柴田泰山・八橋秀法・若林隆仁・大橋雄人・青木篤史

■研究スタッフ:粟飯原岳志・青木玄秀・井川直樹・井上良昭・清水秀浩・山本晴雄・遠田憲弘・八尾敬俊・吉原寛樹

布教研究 『三部経』説教の研究 ―讃題・フレーズ集の作成―

当研究班は、寺院・僧侶の布教教化活動について、主に布教師の視点から研究を行うものである。現在の説教は、法然上人の『御法語集』(前篇・後篇)から「讃題」を頂戴することに慣れすぎてしまった感がある。今回は仏説を直に頂戴してお伝えすることを意識し、『三部経』説教について研究・報告する。

 

■研究主務:宮入良光

■所員:郡嶋昭示・井野周隆・北條竜士・青木篤史

■研究スタッフ:大髙源明・岩井正道・工藤大樹・後藤真法・遠田憲弘・中川正業・宮田恒順・八木英哉・山田紹隆

教学研究Ⅰ(東京)

法然浄土教は善導教学を思想的および信仰的な根拠としつつも、やはりその背景には同時代性も存在している。そこで『観経疏』全文現代語訳を終了した本研究班では、次の研究テーマとして東大寺図書館所蔵『安養抄』を取り上げ、本書の精査を通じて、法然浄土教の同時代性と思想的背景を考察したい。

また併せて石井教道と大橋俊雄が編纂した『昭和新修法然上人全集』が構造的に有している問題点を確認する研究を進め、現在、デジタルアーカイブ研究班が進めている『昭和新修法然上人全集』電子化に向けた教理学的な検討を行いたい。

 

【構成員】

■研究主務:柴田泰山

■研究スタッフ:小川法道・坂上雅翁・長尾光恵・松尾善匠・和田良世・林田徹順

教学研究Ⅱ(京都分室)

現在の浄土宗の基盤を江戸期の事跡からの流れとして根拠づけ、それによって現代の問題に対処するための教学等の根拠を提示することを目的とする基礎研究である。

教学、布教、法式など、浄土宗僧侶に関わる多くの分野で、後世大きな影響を残しているにも関わらず、四休庵貞極に関しての先行研究は限られている。過去に分室で行った文献調査等、各プロジェクトの資産を活用することもできることから、本年度も引き続き、四休庵貞極に関連する文献の講読、資料の収集と分析を行う。

必要な資料と情報の収集・整理と比較・分析を行い、『四休菴貞極全集』のテキストの問題点を確認すると共に、江戸時代の浄土宗の状況と貞極の後世に与えた影響を窺い知ることのできる資料を作成するための精読を行う。

 

【構成員】

■研究主務:八橋秀法

■所員:齊藤舜健・市川定敬・井野周隆・田中芳道

■研究スタッフ:粟飯原岳志・伊藤茂樹・岩井正道・岩谷隆法・小川法道・角野玄樹・曽田俊弘・永田真隆・松尾善匠・南宏信